日経記者が見たお掃除ロボットinxni!知名度に難あるも最大の競合製品あのルンバにも比肩か?

中国Xロボットのロボット掃除機「インクスニィ」

OEM(他社ブランドによる生産)を中心に世界のロボット掃除機市場で世界2位のシェアを握る中国のXロボットが、自社ブランドで日本において初めて本格発売した機種。独自開発の人工知能を使い、途中停止を防ぎながら短時間で取り残しの少ない運転を可能にし、「清掃性能は業界トップクラス」(日本総代理店のリプリ)とアピールする。

レーザーとカメラの搭載で障害物など室内環境をきめ細かく正確に把握する。ゴム製とナイロン素材のブラシを備えてごみをしっかりかきこみ、フローリング床を磨いて光沢を出す。長めのサイドブラシの働きで壁際や隅のほこりをしっかり吸引する。

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本体上部のボタンを押す以外に、スマートフォン(スマホ)で運転を始められる。スマホ上の地図では掃除を終えた箇所をリアルタイムで表示し、タッチするだけで目当ての場所に誘導できる。

Xロボットが製造したロボット掃除機は中国市場最大手である以外に、他社ブランドの製品を受託する形でオーストラリアで全体の半分、欧州で3分の1のシェアを握るという。

ルンバと比べ遜色ない

正直さほど期待していなかったが、実際に使って想像以上の完成度だと感じた。机や壁を感知し自動走行する機能水準は、ベンチマークに設定した、性能に定評のあるルンバ最新機種や国内各社のモデルと比べて遜色ない。

従来のロボット掃除機で課題だった充電器への帰還もきちんと障害なくこなすことを確認できた。ただ、4日間試した中、いすと机の隙間や小ぶりの机の下に入り込むと出てこられなくなり「救助」したことは何度かあった。稼働音もやや大きめで気になる。〈家電メーカー〉

夜間や外出時に本領

暗い場所でも正確に位置情報を把握するレーザースキャンシステムにより、夜間や外出時に本領を発揮しそう。実際に使ったところ、障害物にぶつからず壁や家具を避けて移動して安心した。ただ電源コードや敷物の端などを巻き込んだ時や、扇風機のスタンド部に乗り上げた時に動きが取れなくなったこともある。知名度の低さはいかんともしがたく、トップブランドのルンバを徹底的に研究し、その弱点を克服した成果を広く消費者に認知してもらう広告宣伝や販促活動が欠かせない。〈家電製品総合アドバイザー〉

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浸透には時間かかる

日本では無名ブランドだが、ロボット掃除機分野では世界的に知る人ぞ知る信頼度がある。今回の製品はレーザースキャンシステムで掃除部屋を2Dマップ化し、リアルタイムでマップデータを更新する機能が光る。スキャンデータをスマホに転送し、部屋の間取りを確認しながら、どこまで掃除が完了したかが見て分かるのも魅力的だ。ほかに連続稼働・充電時間や静音性などベンチマークのルンバ最上位機種を上回るスペックは多いが、知名度を考えると浸透には時間がかかる。〈家電量販店関係者〉

 

【記者の目】

独自にAI開発 「安かろう悪かろう」払拭

中国家電につきまとう「安かろう悪かろう」のイメージを塗り替える商品だ。ロボット掃除機分野に日立や三菱といった日本企業が依然参入しないのは「ノウハウの奥が深く並大抵では満足のいく性能にならないから」とある業界関係者はいう。サイクロン式やコードレスといった新型クリーナーで市場を席巻した英ダイソンも、満を持して昨秋投入したロボット型は伸び悩んでいる。

「米アイロボットの『ルンバ980』が性能面で唯一のライバル」。インクスニィは発売元のリプリが胸を張る自信作だ。中国・Xロボットによると従来のロボット型は機能に不備が多く使用をやめる人も多いという。今回は独自に人工知能を開発し課題をしらみつぶしにした。運転効率の向上で短時間にしっかり吸い取る、障害物との衝突を避ける、電池が切れそうになると途中で「事切れる」ことなく充電台への帰還を確保する、といった点で結果を出したという。スマホ対応も充実させた。ルンバ980より運転音は静かにした。

中国の家電メーカーには人件費急騰を背景に、価格の安さで勝負する戦略では生き残れないという危機感が広がっている。Xロボットは世界各地から技術者をかき集め独自に高度のAI(人工知能)を開発した。ルンバにも中国企業の部品が採用されているという。まずOEMで世界市場での実績を積み、しかる後に自社ブランドの攻勢をかける戦略は、シャープを買収した台湾・鴻海に共通する。ダイソンをはじめとする欧米メーカーが「黒船」と騒がれたのもつかの間、今や最先端をうかがうアジア家電から目が離せなくなっている。(日本経済新聞社/田中紹夫)

【製品の仕様】
対象商品 ベンチマーク商品
製品名/メーカー名 インクスニィ/中国・Xロボット ルンバ980/米アイロボット
実売価格 8万7000円前後 13万5000円前後
販売目標 初年度年間1万台、発売5年後までに日本国内でのシェア3割 非公表
発売日 5月下旬 2015年10月10日
最大稼働面積 90畳 112畳
連続稼働時間 2~2.5時間 2時間
充電時間 1.5時間 3時間
運転音 65dB 非公表
本体サイズ、重さ 直径34×高さ9.8cm、7.5kg 直径35.3×高さ9.2cm、3.9kg
本体色 円盤部は銀、側面は青とオレンジの2種類

「新製品 プロが解剖」では注目の新製品を選び、同業他社や、卸・小売店の担当者ら流通関係者、大学教授や評論家などの専門家に1品目について3~5人に評価を依頼しています。チャート図は、日経産業新聞の「解剖 ニューフェース」面でご覧いただけます。コンセプト、新規性、技術革新度、生活提案性、性能・品質、デザイン、環境・健康への配慮度、価格メリットといった12の項目をベンチマーク製品(競合製品)と比較して採点しています。

2016/8/24 日本経済新聞電子版より引用

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